、放せ、放せ、肺病がうつると軽蔑して、私は有難《ありがた》くて泣いてしまった。元気を出せ。みんな、青草原をほしがっていた。私は、部屋へかえって、「花をかえせ。」という帝王の呟きに似た調子の張った詩を書いて、廻診しに来た若い一医師にお見せして、しんみに話合った。午睡という題の、「人間は人間のとおりに生きて行くものだ。」という詩を書いてみせて、ふたりとも、顔を赤くして笑った。五六百万人のひとたちが、五六百万回、六七十年つづけて囁《ささや》き合っている言葉、「気の持ち様。」というこのなぐさめを信じよう。僕は、きょうから涙、一滴、見せないつもりだ。ここに七夜あそんだならば、少しは人が変ります。豚箱などは、のどかであった。越中富山の万金丹《まんきんたん》でも、熊の胃でも、三光丸でも五光丸でも、ぐっと奥歯に噛みしめて苦《にが》いが男、微笑、うたを唄えよ。私の私のスウィートピイちゃん。
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あら、
あたし、
いけない
女?
ほらふきだとさ、
わかっているわよ。
虹《にじ》よりも、
それから、
しんきろうよりも、きれい
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