、このやうな、気づよいをとこが、まま、わしや、いとし。
○同五日。はをいたむゆゑ、げざいをのむ。されども、きかず。さて。
○同六日。くすりも、よくめぐりけるか、歯わ、なをり、はらをいたむ。さくじつまでわ、したきりすずめ、こん日わ、にんげんらしきものを、たべたり。つぎに、あぶらやのおせつ、琴にて、さよかぐらを、けいこ。
○同七日。ひるから、あめふる。また、歯がいたまねばよいが。
○同八日。うてん。それこそ、また歯をいたむにつき、のみけるものわ、くすり。
○同九日。あめふる。か(蚊)ひとつ。
  かならずと。ちぎりしひとわ。来もやらで。さみだれかかる。やどのさびしさ。
  同よる。はを、いたみ候。ああ、さてもさても。
○同十日。あめふる。歯が、いたい。おかや。琴。すゑのちぎりをけいこする。おかやに言はれて、こんにちより、たばこを、たち(断ち)申し候。
○同十一日。あめふる。同いたい、いたい。
  にくまれて、世にすむかひわ、なけれども、かわいがられて、死のよりましか。
  この、こか(古歌)のごとく、わしも、歯がいたくて、世にすむかひわ、なけれども、ねずみとらずの、ねこよりましか。やれやれ
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