碧眼托鉢
――馬をさへ眺むる雪の朝かな――
太宰治
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)執拗《しつよう》な
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)孔子|曰《いわ》く
−−
ボオドレエルに就いて
「ボオドレエルに就いて二三枚書く。」
と、こともなげに人々に告げて歩いた。それは、私にとって、ボオドレエルに向っての言葉なき、死ぬるまでの執拗《しつよう》な抵抗のつもりであった。かかる終局の告白を口の端《は》に出しては、もはや、私、かれに就いてなんの書くことがあろう。私の文学生活の始めから、おそらくはまた終りまで、ボオドレエルにだけ、ただ、かれにだけ、聞えよがしの独白をしていたのではないのか。
「いま、日本に、二十七八歳のボオドレエルが生きていたら。」
私をして生き残させて居るただ一つの言葉である。
なお、深く知らむと欲せば、読者、まず、私の作品の全部を読まなければいけない。再び絶対の沈黙をまもる。逃げない。
ブルジョア芸術に於ける運命
百姓、職工の芸術。私はそれを見たことがない。シャルル・ルイ・フィリップ。彼が私を震
次へ
全13ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
太宰 治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング