如是我聞
太宰治
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)呟《つぶや》き
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)金魚|藻《も》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)お殺せ[#「お殺せ」に傍点]
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一
他人を攻撃したって、つまらない。攻撃すべきは、あの者たちの神だ。敵の神をこそ撃つべきだ。でも、撃つには先ず、敵の神を発見しなければならぬ。ひとは、自分の真の神をよく隠す。
これは、仏人ヴァレリイの呟《つぶや》きらしいが、自分は、この十年間、腹が立っても、抑えに抑えていたことを、これから毎月、この雑誌(新潮)に、どんなに人からそのために、不愉快がられても、書いて行かなければならぬ、そのような、自分の意思によらぬ「時期」がいよいよ来たようなので、様々の縁故にもお許しをねがい、或いは義絶も思い設け、こんなことは大袈裟《おおげさ》とか、或いは気障《きざ》とか言われ、あの者たちに、顰蹙《ひんしゅく》せられるのは承知の上で、つまり、自分の抗議を書いてみるつもりなのである。
私は、最初にヴァレリイの呟きを持ち出し
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