も、記念として、消さずにそのまま残して置こう。
右大臣実朝。
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承元《じょうげん》二年|戊辰《つちのえたつ》。二月小。三日、癸卯《みずのとう》、晴、鶴岳宮《つるがおかぐう》の御神楽《みかぐら》例の如し、将軍家御|疱瘡《ほうそう》に依《よ》りて御出《ぎょしゅつ》無し、前大膳大夫《さきのだいぜんのだいぶ》広元朝臣《ひろもとあそん》御使として神拝す、又|御台所《みだいどころ》御参宮。十日、庚戌《かのえいぬ》、将軍家御疱瘡、頗《すこぶ》る心神を悩ましめ給ふ、之《これ》に依つて近国の御家人等《ごけにんら》群参《ぐんさん》す。廿九日、己巳《つちのとみ》、雨降る、将軍家御|平癒《へいゆ》の間、御|沐浴《もくよく》有り。(吾妻鏡《あずまかがみ》。以下同断)
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おたずねの鎌倉右大臣さまに就いて、それでは私の見たところ聞いたところ、つとめて虚飾を避けてありのまま、あなたにお知らせ申し上げます。
というのが開巻第一頁だ。どうも、自分の文章を自分で引用するというのは、グロテスクなもので、また、その自分の文章たるや、こうして書き写してみると、いかにも青臭く衒気
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