婦に似て来たな、と可哀そうに思っています。わが家の悪癖、かならず亭主が早死《はやじに》して、一時は、曾祖母、祖母、母、叔母、と四人の後家さんそろって居ました。わけても叔母は、二人の亭主を失った。
終唱 そうして、このごろ
芸術、もともと賑やかな、華美の祭礼。プウシュキンもとより論を待たず、芭蕉、トルストイ、ジッド、みんなすぐれたジャアナリスト、釣舟の中に在っては、われのみ簑《みの》を着して船頭ならびに爾余《じよ》の者とは自らかたち分明の心得わすれぬ八十歳ちかき青年、××翁の救われぬ臭癖見たか、けれども、あれでよいのだ。芸術、もとこれ、不倫の申しわけ、――余談は、さて置き、萱野さんとは、それっきりなの? ああ、どのようなロマンスにも、神を恐れぬ低劣の結末が、宿命的に要求される。悪かしこい読者は、はじめ五、六行読んで、そっと、結末の一行を覗《のぞ》き読みして、ああ、まずいまずいと大あくび。よろしい、それでは一つ、しんじつ未曾有《みぞう》、雲散霧消の結末つくって、おまえのくさった腹綿を煮えくりかえさせてあげるから。
そうして、それから、――私たちは諦《あきら》めなかった。帝
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