燒跡をつけられて送り返されたこともポンチ。おのれの妻のくらい過去をせめ、一喜一憂したこともポンチ。質屋の暖簾をくぐるのに、それでも襟元を掻き合せ、おのれのおちぶれを見せまいと風采ただしたこともポンチ。僕たち自身、ポンチの生活を送つてゐる。そのやうな現實にひしがれた男のむりに示す我慢の態度。君はそれを理解できぬならば、僕は君とは永遠に他人である。どうせポンチならよいポンチ。ほんたうの生活。ああ、それは遠いことだ。僕は、せめて、人の情にみちみちたこの四日間をゆつくりゆつくりなつかしまう。たつた四日の思ひ出の、五年十年の暮しにまさることがある。たつた四日の思ひ出の、ああ、一生涯にまさることがある。
 眞野のおだやかな寢息が聞えた。葉藏は沸きかへる思ひに堪へかねた。眞野のはうへ寢がへりを打たうとして、長いからだをくねらせたら、はげしい聲を耳もとへささやかれた。
 やめろ! ほたるの信頼を裏切るな。

 夜のしらじらと明けはなれたころ、二人はもう起きてしまつた。葉藏はけふ退院するのである。僕は、この日の近づくことを恐れてゐた。それは愚作者のだらしない感傷であらう。この小説を書きながら僕は、葉藏を
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