まつたやうな気がした。全身の血が一度に血管を破つて体外にほとばしり出たやうな感じがした。眼玉の上がズキンとなにかで、こ突かれたやうな気がした。全身がブルブル震つたことも意識した。彼はその蘭人の為に土足のまゝで鼻柱を挫かれたやうな思ひがした。今の蘭人の言葉は彼にとつては致命的な侮辱であつた。真赤な眼をして凍つたやうになつて、地図を穴のあく程みつめて居た。「名高くない小さい所は記入してないといふのか」彼はヤツとこれだけ言ふことが出来た。そしてキツト二人の蘭人を見つめた。蘭人達はあまりに変つた王の様子にタヾ恐ろしさの為に震つてばかり居た。そして「ハイ日本さへもこのやうに小さく出てるんですから」とやつと青くなりながら言つた。
謝源はもうだまつて居ることが出来なくなつた。そして妙にフラフラになつて「郭光※[#感嘆符二つ、1−8−75] 酒だ※[#感嘆符二つ、1−8−75]」といつた。郭光はあまりのことにボンヤリして「ハツ」と答へたが別に酒をついでやらうともしなかつた。「酒だといふに※[#感嘆符二つ、1−8−75]」郭光はこの二度目の呼び声にハツと気がつき謝源のグツと差し出した大杯に少しく酒を注
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