数へることが出来た。そして謝源にはその青白い色をして居る畑が自分を冷笑して居るやうにも見えた。若しこの時謝源が空を見上げたならば、もう一つの気味の悪い大きな星が彼の丁度頭の上で、さつきと同じやうに長い尾を引いて流れたのを見たことであつたらう。
彼は長い間ボンヤリ立つて居た……
謝源の乱行は日増に甚だしくなつて行つた。
飲酒、邪淫、殺生その他犯さぬ悪さとてなかつた。この時に於ける郭光の切腹して果てたことも謝源の心に何の反省も与へては呉れなかつた。
中にも土民狩と言つて人民を小鳥か何かのやうに取扱ひ弓等で射殺し、今日は獲物が不足だつたとか、多かつたとかで喜んで居たりしたことは鬼と言つてもまだ言ひ足りない気がする位である。人民の呪詛もひどかつた。
一人として王を恐れ且つ憎まぬ者はないやうになつた。そして人民は皆「王が石垣島を占領した功に誇り、慢心を起し遂にこんなになつてしまつたのだ」と口々に言つて居た。
若し謝源がこれを聞いたならキツと心からの苦笑を洩らしてしまふにちがひない。
こんなフウだつたからそれから一年もたゝぬ中に石垣島のもとの兵に首里が襲はれて易々と復讐されたのは
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