ども買って来て読むようになり、だんだん自信のようなものが出て来て、「豚《ぶた》の背中に鴉《からす》が乗って」という題で、私が田舎の畠で実際に目撃しました珍風景を、でたらめに大いにれいの行をかえて書いてみまして、それをおっかなびっくり、「あけぼの」の詩人のひとりに見てもらいましたところ、面白い、という事になり、その「あけぼの」の誌上に掲載されるという意外の光栄を得まして、それに気をよくして、さらにその次には、「林檎《りんご》を盗みに行った時」という題で、やはり田舎に於ける私の冒険失敗談をかなり長く、れいの如くさかんに行をかえて書き、やはり「あけぼの」に掲載せられまして、これがまあ、当ったというのでございましょうか、新聞などでも、それをまともに取りあげて、何だかもう私の知らないむずかしい言葉でもっともらしく論じているのですから、私も呆れてしまいました。にわかに詩人の友だちもふえて、詩人というものはただもう大酒をくらって、そうして地べたに寝たりなんかすると、純真だとか何だとか言ってほめられるもので、私も抜《ぬ》からず大酒をくらって、とにもかくにも地べたに寝て見せましたので、仲間からもほめられ
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