たけの頬は、やつぱり赤くて、さうして、右の眼蓋の上には、小さい罌粟粒ほどの赤いほくろが、ちやんとある。髪には白髪もまじつてゐるが、でも、いま私のわきにきちんと坐つてゐるたけは、私の幼い頃の思ひ出のたけと、少しも変つてゐない。あとで聞いたが、たけが私の家へ奉公に来て、私をおぶつたのは、私が三つで、たけが十四の時だつたといふ。それから六年間ばかり私は、たけに育てられ教へられたのであるが、けれども、私の思ひ出の中のたけは、決してそんな、若い娘ではなく、いま眼の前に見るこのたけと寸分もちがはない老成した人であつた。これもあとで、たけから聞いた事だが、その日、たけの締めてゐたアヤメの模様の紺色の帯は、私の家に奉公してゐた頃にも締めてゐたもので、また、薄い紫色の半襟も、やはり同じ頃、私の家からもらつたものだといふ事である。そのせゐもあつたのかも知れないが、たけは、私の思ひ出とそつくり同じ匂ひで坐つてゐる。だぶん贔屓目であらうが、たけはこの漁村の他のアバ(アヤの Femme)たちとは、まるで違つた気位を持つてゐるやうに感ぜられた。着物は、縞の新しい手織木綿であるが、それと同じ布地のモンペをはき
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