「さう。」と言つてかすかに首肯き、おなかをおさへた。
「まだ痛いか。」
「すこし。」と言つた。
「薬を飲んだか。」
 黙つて首肯く。
「ひどく痛いか。」
 笑つて、かぶりを振つた。
「それぢやあ、たのむ。僕を、これから、たけのところへ連れて行つてくれよ。お前もおなかが痛いだらうが、僕だつて、遠くから来たんだ。歩けるか。」
「うん。」と大きく首肯いた。
「偉い、偉い。ぢやあ一つたのむよ。」
 うん、うんと二度続けて首肯き、すぐ土間へ降りて下駄をつつかけ、おなかをおさへて、からだをくの字に曲げながら家を出た。
「運動会で走つたか。」
「走つた。」
「賞品をもらつたか。」
「もらはない。」
 おなかをおさへながら、とつとと私の先に立つて歩く。また畦道をとほり、砂丘に出て、学校の裏へまはり、運動場のまんなかを横切つて、それから少女は小走りになり、一つの掛小屋へはひり、すぐそれと入違ひに、たけが出て来た。たけは、うつろな眼をして私を見た。
「修治だ。」私は笑つて帽子をとつた。
「あらあ。」それだけだつた。笑ひもしない。まじめな表情である。でも、すぐにその硬直の姿勢を崩して、さりげないやうな、
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