から、その折にはよろしくお願ひします、といふやうな葉書を嫂に差上げてゐたのである。
「一週間ほど前です。東海岸で、手間どつてしまひました。蟹田のN君には、ずいぶんお世話になりました。」N君の事は、嫂も知つてゐる筈だつた。
「さう。こちらではまた、お葉書が来ても、なかなかご本人がお見えにならないので、どうしたのかと心配してゐました。陽子や光《みつ》ちやんなどは、とても待つて、毎日交代に停車場へ出張してゐたのですよ。おしまひには、怒つて、もう来たつて知らない、と言つてゐた人もありました。」
陽子といふのは長兄の長女で、半年ほど前に弘前の近くの地主の家へお嫁に行き、その新郎と一緒にちよいちよい金木へ遊びに来るらしく、その時も、お二人でやつて来てゐたのである。光ちやんといふのは、私たちの一ばん上の姉の末娘で、まだ嫁がず金木の家へいつも手伝ひに来てゐる素直な子である。その二人の姪が、からみ合ひながら、えへへ、なんておどけた笑ひ方をして出て来て、酒飲みのだらしない叔父さんに挨拶した。陽子は女学生みたいで、まだ少しも奥さんらしくない。
「をかしい恰好。」と私の服装をすぐに笑つた。
「ばか。これが、
前へ
次へ
全228ページ中146ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
太宰 治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング