朝
太宰治
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)眉《まゆ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)九時|頃《ごろ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から2字上げ](「新思潮」昭和二十二年七月号)
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私は遊ぶ事が何よりも好きなので、家で仕事をしていながらも、友あり遠方より来るのをいつもひそかに心待ちにしている状態で、玄関が、がらっとあくと眉《まゆ》をひそめ、口をゆがめて、けれども実は胸をおどらせ、書きかけの原稿用紙をさっそく取りかたづけて、その客を迎える。
「あ、これは、お仕事中ですね。」
「いや、なに。」
そうしてその客と一緒に遊びに出る。
けれども、それではいつまでも何も仕事が出来ないので、某所に秘密の仕事部屋を設ける事にしたのである。それはどこにあるのか、家の者にも知らせていない。毎朝、九時|頃《ごろ》、私は家の者に弁当を作らせ、それを持ってその仕事部屋に出勤する。さすがにその秘密の仕事部屋には訪れて来るひとも無いので、私の仕事もたいてい予定どおりに進行する。しかし、午後の三時頃になると、疲れ
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