ン》、嘘《ウソ》デアル。所詮《ショセン》ハ筏《イカダ》ノ上《ウエ》ノ組《ク》ンヅホツレツデアル、ヨロメキ、ヨロメキ、君《キミ》モ、私《ワタシ》モ、ソレカラ、マタ、林氏《ハヤシシ》、寝《ネ》ル間《マ》モ烈《ハゲ》シク一様《イチヨウ》ニ押《オ》シ流《ナガ》サレテ居《オ》ルヨウダ。流《ナガ》レ、澱《ヨド》ミテ淵《フチ》、怒《イカ》リテハ沸々《フツフツ》ノ瀬《セ》、懸《カカ》リテハ滝《タキ》、果《ハテ》ハ、ミナ一《イツ》。混《コン》トンノ海《ウミ》デアル。肉体《ニクタイ》ノ死亡《シボウ》デアル。キミノ仕事《シゴト》ノコルヤ、ワレノ仕事《シゴト》ノコルヤ。不滅《フメツ》ノ真理《シンリ》ハ微笑《ホホエ》ンデ教《オシ》エル、「一長一短《イッチョウイッタン》。」ケサ、快晴《カイセイ》、ハネ起《オ》キテ、マコト、スパルタノ愛情《アイジョウ》、君《キミ》ノ右頬《ミギホオ》ヲ二《フタ》ツ、マタ三《ミ》ツ、強《ツヨ》ク打《ウ》ツ。他意《タイ》ナシ。林房雄《ハヤシフサオ》トイウ名《ナ》ノ一陣涼風《イチジンリョウフウ》ニソソノカサレ、浮《ウ》カレテナセル業《ワザ》ニスギズ。トリツク怒濤《ドトウ》、実《ジツ》ハ楽《タノ》シキ小波《サザナミ》、スベテ、コレ、ワガ命《イノチ》、シバラクモ生《イ》キ伸《ノ》ビテミタイ下心《シタゴコロ》ノ所為《ショイ》、東京《トウキョウ》ノオリンピック見《ミ》テカラ死《シ》ニタイ、読者《ドクシャ》ソウカト軽《カル》クウナズキ、深《フカ》キトガメダテ、シテハナラヌゾ。以上《イジョウ》。

 山上の私語。
「おもしろく読みました。あと、あと、責任もてる?」
「はい。打倒のために書いたのでございませぬ。ごぞんじでしょうか。憤怒《ふんぬ》こそ愛の極点。」
「いかって、とくした人ないと古老のことばにもある。じたばた十年、二十年あがいて、古老のシンプリシティの網の中。はははは。そうして、ふり仮名つけたのは?」
「はい。すこし、よすぎた文章ゆえ、わざと傷つけました。きざっぽく、どうしても子供の鎧《よろい》、金糸銀糸。足なが蜂《ばち》の目さめるような派手な縞模様《しまもよう》は、蜂の親切。とげある虫ゆえ、気を許すな。この腹の模様めがけて、撃て、撃て。すなわち動物学の警戒色。先輩、石坂氏への、せめて礼儀と確信ございます。」

 われとわが作品へ、一言の説明、半句の弁解、作家にとっては致命
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