てないんだし、それに、叔父さんだって、いつもお母さんを尊敬していらっしゃるのだから、大丈夫よ。お母さん、叔父さんをお叱りになること無いと思うわ。ただ、あたしが少し恥ずかしいの。どうしてだか、自分でもよくわかりませんわ。あたしは、このごろずっと、お母さんに変に恥ずかしがってばかりいるの。お母さんだけじゃない。みんなに。もっと、平気になりたいのですけれど。
つまらないわね、そんなこと。ふきとばせ、シャボン玉。きのうは、お寺さんと買い物にまいりました。お寺さんの買ったものは、白い便箋《びんせん》と、口紅と、(口紅は、お寺さんに、とてもよく合う色でした。)それから、時計の皮でした。あたしは、お金入れと、(とてもとても気に入ったお金いれよ。焦茶《こげちゃ》と赤の貝の模様です。だめかしら。あたし、趣味が低いのね。でも、口金の所と貝の口の所が、金色で細くいろどられて、捨てたものでもないの。あたしこれを買う時に、お金入れを顔に近づけてみましたの。そしたら、口金にあたしの顔が小さく丸く映っていて、なかなか可愛く見えました。ですから、これからあたしは、このお金いれを開ける時には、他の人がお金入れを開ける
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