うの不人情のあだを打って見せる、婆、その時まで死なずに待って居《お》れ、と心の内で棄台詞《すてぜりふ》を残して、足音荒く馴染《なじみ》の茶屋から引上げた。
 男は国へ掃ってまず番頭を呼び、お金がもうこの家に無いというけれども、それは間違い、必ずそのような軽はずみの事を言ってはならぬ、暗闇《くらやみ》に鬼と言われた万屋の財産が、一年か二年でぐらつく事はない、お前は何も知らぬ、きょうから、わしが帳場に坐る、まあ、見ているがよい、と言って、ただちに店のつくりを改造して両替屋を営み、何もかも自分ひとりで夜も眠らず奔走すれば、さすがに万屋の信用は世間に重く、いまは一文無しとも知らず安心してここに金銀をあずける者が多く、あずかった金銀は右から左へ流用して、四方八方に手をまわし、内証を見すかされる事なく次第に大きい取引きをはじめて、三年後には、表むきだけではあるがとにかく、むかしの万屋の身代と変らぬくらいの勢いを取りもどし、来年こそは上方へのぼって、あの不人情の廓の者たちを思うさま恥ずかしめて無念をはらしてやりたいといさみ立って、その年の暮、取引きの支払いを首尾よく全部すませて、あとには一文の金も残
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