れを見ただけでも江戸へ来たかいがあった、上方へのよい土産話が出来た、と互いによろこび首肯《うなず》き合っているところへ、賤《いや》しい身なりの小男が、小桶《こおけ》に玉網《たも》を持ち添えてちょこちょこと店へやって来て、金魚屋の番頭にやたらにお辞儀をしてお追従《ついしょう》笑いなどしている。小桶を覗いてみると無数のぼうふらがうようよ泳いでいる。
「金魚のえさか。」とひとりが興覚め顔して呟《つぶや》いた。
「えさだ。」もうひとりも、溜息《ためいき》をついて言った。
何だか白けた真面目《まじめ》な気持ちになってしまった。たかが金魚を、一つ十両で平然と買って行く人もあり、また一方では、その餌《えさ》のぼうふらを売って、ほそぼそと渡世している人もある。江戸は底知れずおそろしいところだ、と苦労知らずの三粋人も、さすがに感無量の態《てい》であった。
小桶に一ぱいのぼうふらを、たった二十五文で買ってもらって、それでも嬉《うれ》しそうに、金魚屋の下男にまで、それではまた、と卑《いや》しい愛嬌《あいきょう》を振り撤《ま》きいそいそと立ち去るその小男のうしろ姿を見送ってひとりが、
「おや、あれは、利左
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