お惣菜《そうざい》、それも母御の婆《ばあ》さまが食べすぎると言って夫婦でじろりと睨《にら》むやつさ。それにしても、お産の騒ぎとは考えた。取揚婆が四人もつめかけ、医者は次の間で早め薬とは、よく出来た。お互いに、そんな身分になりたいものさね。大阿呆《おおあほう》め。お金は、それでもいくらか持っているようだし、現金払いなら、こちらは客商売、まあ、ごゆるりと遊んでいらっしゃい。とにかく、この一歩金、いただいて置きましょう、贋金《にせがね》でもないようだ。
「やれうれしや、」と婆はこぼれるばかりの愛嬌《あいきょう》を示して、一歩金を押しいただき、「鯛など買わずに、この金は亭主《ていしゅ》に隠して置いて、あたしの帯でも買いましょう。おほほほ。ことしの年の暮は、貧乏神と覚悟していたのに、このような大黒様が舞い込んで、これで来年中の仕合せもきまりました。お礼を申し上げますよ、旦那。さあ、まあ、どうぞ。いやですよ、こんな汚い台所などにお坐りになっていらしては。洒落《しゃれ》すぎますよ。あんまり恐縮で冷汗が出るじゃありませんか。なんぼ何でも、お人柄にかかわりますよ。どうも、長者のお旦那に限って、台所口がお
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