重い太鼓なんか担がせられて、あいたたた、あたしゃまた神経痛が起って来た。あしたから、あなたが、ごはんをたくのですよ。薪《まき》も割ってもらわなくちゃこまるし、糠味噌《ぬかみそ》もよく掻《か》きまわして、井戸は遠いからいい気味だ、毎朝|手桶《ておけ》に五はいくんで来て台所の水甕《みずがめ》に、あいたたた、馬鹿な亭主を持ったばかりに、あたしは十年寿命をちぢめた。」と喚《わめ》き、その翌《あく》る日の組も同じ事、いずれも女は不平たらたら、男はひとしく口汚くののしられて、女子と小人は養い難《がた》しと眼をかたくつぶって観念する者もあり、家へ帰って矢庭《やにわ》に女房をぶん殴って大立廻りを演じ離縁騒ぎをはじめた者もあり、運悪く大雪の日の番に当った一組は、ひとしお女房の歎きやら呪《のろ》いやらが猛烈を極め、共に風邪をひき、家へ帰って床を並べて寝込んでしまって咳《せき》にむせかえりながらも烈《はげ》しく互いに罵倒《ばとう》し合い、太鼓の仕置きも何の事は無い、女の口の悪さを暴露したという結果に終っただけのようであった。十組のお仕置きが全部すんでから、また改めて皆にお呼び出しがあり、一同|不機嫌《ふきげ
前へ 次へ
全209ページ中161ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
太宰 治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング