さい》にたどり着いた頃には、眼を泣きはらして猿《さる》の顔のようになり、手下の山賊たちは興覚めたが、統領はやさしくみずから看護して、その眼のなおった頃には娘も、統領に少しなついて落ちつき、東北言葉もだんだんわかるようになって、山賊の手下たちの無智《むち》な冗談に思わず微笑《ほほえ》み、やがて夫の悪い渡世を知るに及んで、ぎくりとしたものの、女三界に家なし、ここをのがれても都の空の方角さえ見当つかず、女はこうなると度胸がよい、ままよと観念して、夫には優しくされ手下の者たちには姐御《あねご》などと言われてかしずかれると、まんざら悪い気もせず、いつとはなしに悪にそまり、亭主《ていしゅ》のする事なす事なんでも馬鹿《ばか》らしく見えて仕様のない女房《にょうぼう》もあり、また、亭主の行為がいちいち素晴らしい英雄的なものに見えてたまらない女房もあり、いずれも悪妻、この京育ちの美女は後者に属しているらしく、夫の憎むべき所業も見馴《みな》れるに随《したが》い何だか勇しくたのもしく思われて来て、亭主が一仕事して帰るといそいそ足など洗ってやり、きょうの獲物は何、と笑って尋ね、旅人から奪って来た小袖《こそで》を
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