しても、肩を叩《たた》き合って大笑いして、それっきりです。後々の傷にはなりません。けれども落第は、ちがいますよ。それを告白しても、人はそんなに無邪気に笑って聞きのがしては、くれません。お前は、どこやら、軽蔑《けいべつ》されてしまいます。出世のさまたげ、卑屈の基。人生は、学生々活にだけあると思うと、とんだ間違い。よくよく気をつけて、抜け目なくやっておくれ。ポローニヤスの子じゃないか。つぎに、学友の選びかたに就いて。これもまた重大です。一学年上の学生を、必ずひとり、友人にして置かなければならぬ。試験の要領を聞くためだ。試験官の採点の癖を教えてもらえる。さらに、もうひとり、同学年の秀才と必ず親交を結ばなければならぬ。ノオトを貸してもらい、また試験の時には、お前の座席のすぐ隣りに坐ってもらうためであります。学友は、その二人だけで充分です。不要の交友は、不要の出費。さて、次は、金銭に就いて。これは、とりわけ注意を要する。金銭フ貸借、一切、まかりならん。借りる事は、もとより不埒《ふらち》、貸す事もならん。餓死するとも借金はするな。世の中は、人を餓死させないように出来ています。うき世の人は、娘を嫁に
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