をはじめているのかも知れぬ。ゆうべの朗読劇にしたって、あれにもポローニヤスの深慮遠謀があったのさ。そうでも無ければ、あの人は気が狂ったのだ。何か、抜け目の無い、小ざかしい魂胆があったのさ。僕には、たいてい見当が附いている。あの人たちは、どうして、なかなかの曲者《くせもの》だよ。もっとも、曲者というものは、たいてい浅墓《あさはか》で興覚めな、けち臭い打算ばっかりやっている哀れな、賤《いや》しい存在だが、それを見破ったからとて、こちらでただ軽蔑《けいべつ》して、のほほん顔でいたならば、ひどい目に遭う。うっかりしていると、してやられる。黙殺したい、いや、蔑棄したい程、いやな存在だが、油断がならん。僕は、はじめ、ポローニヤスの朗読劇を、娘可愛さのあまり逆上して、王や王妃に、いや味を言うための計略、とばかり思っていたが、ゆうべまた、よく考えてみたら、どうもそればかりでも無いらしい。あの人たちのする事は、一から十まで心理の駈引《かけひ》き、巧妙卑劣の詐欺《さぎ》なのだから、いやになる。僕は、ゆうべ、やっと判《わか》って、判ったら、ぎょっとした。あの人たちは、おそろしい。一つも信用出来ない。此の世の
前へ 次へ
全200ページ中174ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
太宰 治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング