うのであります。先日の二人の学生さんだって、十六七には見えながら、その話振りには、ちょいとした駈引《かけひき》などもあり、なかなか老成していた箇所がありました。いわば、新聞|編輯者《へんしゅうしゃ》として既に一家を成していました。お二人が帰られてから私は羽織を脱ぎ、そのまま又|布団《ふとん》の中にもぐりこみ、それから暫《しば》らく考えました。今の学生諸君の身の上が、なんだか不憫《ふびん》に思われて来たのであります。
 学生とは、社会のどの部分にも属しているものではありません。また、属してはならないものであると考えます。学生とは本来、青いマントを羽織ったチャイルド・ハロルドでなければならぬと、私は頑迷にも信じている者であります。学生は思索の散歩者であります。青空の雲であります。編輯者に成りきってはいけない。役人に成りきってはいけない。学者になりきってさえいけない。老成の社会人になりきることは学生にとって、恐ろしい堕落であります。学生自らの罪ではないのでしょう。きっと誰かに、そう仕向けられているのでしょう。だから私は不憫だと言うのであります。
 それでは学生本来の姿は、どのようなものである
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