を防止せむとせられる御意見も、つまるところは他国に対する内政干渉であって、会の目的としては甚《はなは》だ面白くない。しかし、両説の目標とするところは、共に支那の保全にあるのだから、本会は『支那の保全』を以てその目的としては如何《いかが》であろう、という厳粛な発言を行って満座を抑え、両派共これには異議無く、満場一致|大喝采裡《だいかっさいり》に会の目的が可決され、この『支那の保全』は、爾来《じらい》、わが国の対支国是となっているという事です。私たちは、もうこの上、何も言う事が無い竄ネいか。支那にだって偉い人がたくさんいますよ。私たちの考えている事くらい、支那の先覚者たちも、ちゃんと考えているでしょう。まあ、民族自発ですね。私はそれを期待しています。支那の国情は、また日本とちがっているところもあるのです。支那の革命は、その伝統を破壊するからよろしくないと言っている人もあるようですが、しかし、支那にいい伝統が残っていたから、その伝統の継承者に、革命の気概などが生れたのだとも考えられます。たち切られるのは、形式だけです。家風あるいは国風、その伝統は決して中断されるものではありません。東洋本来の
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