るのもむりが無いのですよ、僕はかえって、あの人に気の毒でした。前はあの人をあまり好きじゃなかったけれども、いろいろ話合っているうちに、なかなか正直な人だという事がわかりました。僕はちょっと皮肉のつもりで、あなたはクリスチャンでしょう? と言ってやったら、あの人は、まじめに首肯《うなず》いて、そうです、クリスチャンだから罪を犯さないという事はありません。かえって僕のようにたくさんの欠点をもっていて、罪を犯してばかりいる悪徳者こそ、クリスチャンの選手になるのです。教会は、僕のような過失を犯し易《やす》い者の病院です。Krankenhaus です。そうして福音は僕たち Herz の病人の Krankenbett です、と言うのです。その矢島さんの言葉が、へんに痛く僕の心にしみて、僕もふっと、その Krankenhaus の扉《とびら》をたたいてみたくなったのです。僕はいまたしかに Kranke なのです。それできょう、ふらふら、教会に行ってみたのですが、でも、どうもあの西洋風の大袈裟な儀礼には納得できないものがあって、失望しました。しかし、説教がちょうど旧約の『出エジプト記』の箇所で、モオゼ
前へ
次へ
全198ページ中152ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
太宰 治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング