一枚を、二円で買ひました。この画はいまにきつと高くなります、と生意気な事を言つて、豊田の「おどさ」にあげました。おどさは笑つてゐました。あの画は、今も豊田様のお家に、あると思ひます。いまでは百円でも安すぎるでせう。棟方志功氏の、初期の傑作《けつさく》でした。
棟方志功氏の姿は、東京で時折、見かけますが、あんまり颯爽と歩いてゐるので、私はいつでも知らぬ振りをしてゐます。けれども、あの頃の志功氏の画は、なか/\佳かつたと思つてゐます。もう、二十年ちかく昔の話になりました。豊田様のお家の、あの画が、もつと、うんと、高くなつてくれたらいゝと思つて居ります。
底本:「太宰治全集 10」筑摩書房
1990(平成2)年12月25日初版第1刷発行
初出:「月刊東奥 第3巻第1号」
1941(昭和16)年1月11日
入力:砂場清隆
校正:林 幸雄
2002年12月3日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全2ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
太宰 治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング