ない中学生とは遊ばない決心をしていたのであるが、やはり遊んでしまった。トランプ。ツウテンジャック。木村の勝負のしかたが、あまりにも汚いので呆《あき》れた。木村は、去年の暮に、家から二百円持ち出して、横浜、熱海《あたみ》と遊びまわり、お金を使い果してから、ぼんやり僕の家へやって来たので、僕は木村の家へ、すぐに電話をかけて知らせてやった。木村の家では警察に捜査願いを出していたのだそうだ。彼の家では、いまは僕が大恩人という事になっているとの事である。木村の家庭もわるいようだが、木村も馬鹿である。やっぱり、ただの不良である。ニイチェが泣きますよ。佐伯だって馬鹿だ。このごろ、つくづくいやになって来た。大ブルジョアの子供で、背丈は六尺ちかく、ひょろひょろしている。からだが弱いから中学だけで、学校はよすのだそうだ。はじめは外国文学の話など、いろいろ僕に話して聞かせるので、僕も、木村のニイチェに興奮した時みたいに、大いに感激して僕の友人は佐伯ひとりだと思い、すすんでこちらからも彼の家に遊びに行ってやったものだが、どうも彼は柔弱でいけない。家にいる時は、五つか六つの子供が着るような大きい絣《かすり》の着
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