いやなんだ。とても、だめなんだ。自活したいなあ」
「学校っていやなところさ。だけど、いやだいやだと思いながら通《かよ》うところに、学生生活の尊さがあるんじゃないのかね。パラドックスみたいだけど、学校は憎まれるための存在なんだ。僕だって、学校は大きらいなんだけど、でも、中学校だけでよそうとは思わなかったがなあ。」
「そうですね。」
 ひとたまりも無かったのである。ああ、人生は単調だ!


 五月一七日。月曜日。
 晴れ。また蹴球をはじめている。きょうは、二中と試合をした。僕は前半に二点、後半に一点をいれた。結局、三対三。試合の帰りに、先輩と目黒でビイルを飲んだ。
 自分が低能のような気がして来た。


 五月三十日。日曜日。
 晴れ。日曜なのに、心が暗い。春も過ぎて行く。朝、木村から電話。横浜に行かぬかというのだ。ことわる。午後、神田《かんだ》に行き、受験参考書を全部そろえた。夏休みまでに代数研究(上・下)をやってしまって、夏休みには、平面幾何の総復習をしよう。夜は、本棚《ほんだな》の整理をした。
 暗澹《あんたん》。沈鬱《ちんうつ》。われ山にむかいて目をあぐ。わが扶助《たすけ》はいずこ
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