きくて、あたたかいものだ。キリストが、その悲しみの極まりし時、「アバ、父よ!」と大声で呼んだ気持もわかるような気がする。
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母のあいより なおもあつく
地のもといより さらにふかし
ひとのおもいの うえにそびえ
おおぞらよりも ひろらかなり
[#ここから13字下げ]――さんびか第五十二
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四月二十二日。木曜日。
曇。別段、変った事もないから書かぬ。学校、遅刻した。
四月二十三日。金曜日。
雨。夜、木村が、ギタを持って家へ遊びに来たので、ひいてみ給え、と言ってやった。下手くそだった。僕がいつまでも黙っているので、木村は、じゃ失敬と言って帰った。雨の中を、わざわざギタをかかえてやって来る奴は、馬鹿だ。疲れているので、早く寝る。就寝、九時半。
四月二十四日。土曜日。
晴。きょう朝から一日、学校をさぼった。こんないい天気に、学校に行くなんて、もったいない。上野公園に行き、公園のベンチで御弁当を食べて、午後は、ずっと図書館。正岡子規《まさおかしき》全集を一巻から四巻まで借出して、あちこち読みちらした。暗くなっ
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