たら、杉野さんが、こわばった表情をして、用事ありげに僕たちの部屋へはいって来て、ぺたりと坐って、
「当分おわかれですわね。」と笑うような顔で、口をへんに曲げて言って、一瞬後、ひいと声を挙げて泣き伏した。
 意外であった。兄さんと僕とは顔を見合せた。兄さんは、口をとがらせていた。当惑の様子である。杉野さんは、それから二、三分、泣きじゃくっていた。僕たちは黙っていた。杉野さんは、やがて起き上り、顔をエプロンで覆《おお》ったまま部屋から出て行った。
「なあんだ。」と僕が小さい声で言うと、兄さんも顔をしかめて、
「みっともない。」と言った。
 けれども僕には、だいたいわかった。その時は、それ以上、杉野さんに就いて語るのをお互いに避けて、他の雑談をはじめたが、みんながタクシイに乗って出発した後で、さすがに、兄さんは、ちょっと考え込んだ様子であった。
 兄さんは二階の部屋に仰向に寝ころんで、
「結婚しちゃおうか。」と言って笑った。
「兄さん、前から気がついていたの?」
「わからん。さっき泣き出したので、おや? と思ったんだ。」
「兄さんも、杉野さんを好きなの?」
「好きじゃないねえ。僕より、としが
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