」という台詞《せりふ》のとおり、かねて、あこがれていた俳優が、あまりにも容易に掴《つか》み取れそうなのを見て、うんざりしたのか。
「進は、合格しても、あまり嬉しそうでないじゃないか。」兄さんも、そう言っていた。
「考えてみます。」僕は、まじめに答えた。
 今夜は、兄さんと、とてもつまらぬ議論をした。たべものの中で、何が一番おいしいか、という議論である。いろいろ互いに食通振《しょくつうぶ》りを披瀝《ひれき》したが、結局、パイナップルの鑵詰《かんづめ》の汁《しる》にまさるものはないという事になった。桃の鑵詰の汁もおいしいけど、やはり、パイナップルの汁のような爽快《そうかい》さが無い。パイナップルの鑵詰は、あれは、実《み》をたべるものでなくて、汁だけを吸うものだ、という事になって、
「パイナップルの汁なら、どんぶりに一ぱいでも楽に飲めるね。」と僕が言ったら、
「うん、」と兄さんもうなずいて、「それに氷のぶっかきをいれて飲むと、さらにおいしいだろうね。」と言った。兄さんも、ばかな事を考えている。
 たべものの話をしたら、やけにおなかが空《す》いて来たので、食通ふたりは、こっそり台所へ行って、お
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