うんですが、――」
「役者? 思い切ったもんだねえ。まさか、活動役者じゃないだろうね。」
僕は、うつむいて二人の会話を拝聴していた。
「映画です。」と兄さんは、あっさり言った。
「映画?」津田さんは奇声を発した。「それぁ君、問題だぜ。」
「僕もずいぶん考えたんですけど、弟は、ひどく苦しくなると、きまって、映画俳優になろうと決心するらしいんです。子供の事ですから、そこに筋道立った理由なんか無いのですが、それだけ宿命的なものがあるんじゃないかと僕は思ったんです。気持の楽な時、うっとり映画俳優をあこがれるなんてのは、話になりませんけど、いのちの瀬戸際《せとぎわ》になると、ふっと映画俳優を考えつくらしいのですが、僕は、それを神の声のように思っているのです。そいつを信じたいような気がするんです。」
「そう言ったって君、親戚《しんせき》や何かの反対もあるだろうし、とにかく問題だねえ、それは。」
「親戚の反対やなんかは、僕がひき受けます。僕だって、学校は中途でよしてしまうし、それに小説家志願と来ているんですから、もう親戚の反対には馴《な》れたものです。」
「君が平気だって、弟さんが、――」
「僕だ
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