。姉さんは、ちょっと間《ま》の悪そうな顔をして、
「あら、坊やは少し痩《や》せたわね、叔母さん?」
「あ、坊やは、よしてくれ。いつまでも坊やじゃねえんだ。」と僕は、姉さんの前に、あぐらをかいて言った。
「まあ。」と姉さんは眼を見はった。
「痩せる筈《はず》さ。大病になっちゃったんだよ。きょう、やっと起きて歩けるようになったんだ。」すこし大袈裟《おおげさ》に言った。「おい、叔母さん、お茶をくれ。のどが乾いて仕様がねえんだ。」
「なんです、その口のききかたは!」叔母さんは顔をしかめた。「すっかり、不良になっちゃったのね。」
「不良にもなるさ。兄さんだって、このごろは、毎晩お酒を飲んで帰るんだ。兄弟そろって不良になってやるんだ。お茶をくれ。」
「進ちゃん。」姉さんは、あらたまった顔つきになり、「兄さんは、お前に何か言ったの?」
「何も言やしねえ。」
「お前が大病したって本当?」
「ああ、ちょっとね。心配のあまり熱が出たんだ。」
「兄さんが、毎晩お酒を飲んで帰るって、本当?」
「そうさ。兄さんも、すっかり人が変ったぜ。」
姉さんは、顔をそむけた。泣いたのだ。僕も泣きたくなったが、ここぞと怺《
前へ
次へ
全232ページ中104ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
太宰 治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング