える。はる、こうろうの花のえん、の曲の合奏である。
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(菊代)(その口笛に聞耳を立て)おや、あたしのお友だちが迎えに来た。行かなくちゃいけない。それじゃあ、お願いしてよ。いいでしょう? 奥さんにね、あたしからだって言わないで、先生から何とか上手《じょうず》に嘘《うそ》ついて奥さんにあげてよ。あのお澄ましの奥さんが、どんな顔をするか、ああ愉快だ。
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菊代、上手《かみて》の出入口に向って走り去る。野中教師、はっと気を取り直して呼びとめる。
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(野中) お待ちなさい、菊代さん。どこへ行くのです。
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菊代、戸口のところに立ち上り、野中教師のほうにくるりと向き直る。口笛は、なお聞えている。
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(菊代)(ほがらかに)お友だちのところへ。
(野中) それじゃあの歌は、あなたが教えてやったの
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