秋風記
太宰治
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)従弟《いとこ》
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)敵軍|潰乱《かいらん》全線に総退却。
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから引用文、7字下げ]
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[#ここから引用文、7字下げ]
立ちつくし、
ものを思へば、
ものみなの物語めき、 (生 田 長 江)
[#ここで引用文終わり]
あの、私は、どんな小説を書いたらいいのだろう。私は、物語の洪水の中に住んでいる。役者になれば、よかった。私は、私の寝顔をさえスケッチできる。
私が死んでも、私の死顔を、きれいにお化粧してくれる、かなしいひとだって在るのだ。Kが、それをしてくれるであろう。
Kは、私より二つ年上なのだから、ことし三十二歳の女性である。
Kを、語ろうか。
Kは、私とは別段、血のつながりは無いのだけれど、それでも小さいころから私の家と往復して、家族同様になっている。そうして、いまはKも、私と同じ様に、「生れて来なければよかった。」と思っている。生れて、十年たたぬうちに、この世
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