めえの手紙のお説のとおりだよ」
「そう」
私のその恋は、消えていた。
夜が明けた。
部屋が薄明るくなって、私は、傍で眠っているそのひとの寝顔をつくづく眺《なが》めた。ちかく死ぬひとのような顔をしていた。疲れはてているお顔だった。
犠牲者の顔。貴い犠牲者。
私のひと。私の虹《にじ》。マイ、チャイルド。にくいひと。ずるいひと。
この世にまたと無いくらいに、とても、とても美しい顔のように思われ、恋があらたによみがえって来たようで胸がときめき、そのひとの髪を撫《な》でながら、私のほうからキスをした。
かなしい、かなしい恋の成就《じょうじゅ》。
上原さんは、眼をつぶりながら私をお抱きになって、
「ひがんでいたのさ。僕は百姓の子だから」
もうこのひとから離れまい。
「私、いま幸福よ。四方の壁から嘆きの声が聞えて来ても、私のいまの幸福感は、飽和点よ。くしゃみが出るくらい幸福だわ」
上原さんは、ふふ、とお笑いになって、
「でも、もう、おそいなあ。黄昏だ」
「朝ですわ」
弟の直治は、その朝に自殺していた。
七
直治の遺書。
姉さん。
だめだ。さきに行くよ。
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