日記の少女なのね。もう、何を言っても仕方が無い」
そう言って、私から離れて行ったお友達。あのお友達に、あの時、私はレニンの本を読まないで返したのだ。
「読んだ?」
「ごめんね。読まなかったの」
ニコライ堂の見える橋の上だった。
「なぜ? どうして?」
そのお友達は、私よりさらに一寸くらい背《せい》が高くて、語学がとてもよく出来て、赤いベレー帽がよく似合って、お顔もジョコンダみたいだという評判の、美しいひとだった。
「表紙の色が、いやだったの」
「へんなひと。そうじゃないんでしょう? 本当は、私をこわくなったのでしょう?」
「こわかないわ。私、表紙の色が、たまらなかったの」
「そう」
と淋しそうに言い、それから、私を更級日記だと言い、そうして、何を言っても仕方がない、ときめてしまった。
私たちは、しばらく黙って、冬の川を見下《みおろ》していた。
「ご無事で。もし、これが永遠の別れなら、永遠に、ご無事で。バイロン」
と言い、それから、そのバイロンの詩句を原文で口早に誦《しょう》して、私のからだを軽く抱いた。
私は恥ずかしく、
「ごめんなさいね」
と小声でわびて、お茶の水駅の
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