直治は相変らずの東京出張で、もう十日あまり帰らない。私ひとりで、心細さのあまり和田の叔父さまへ、お母さまの御様子の変った事を葉書にしたためて知らせてやった。
発熱してかれこれ十日目に、村の先生が、やっと腹工合《はらぐあ》いがよろしくなりましたと言って、診察しにいらした。
先生は、お母さまのお胸を注意深そうな表情で打診なさりながら、
「わかりました、わかりました」
とお叫びになり、それから、また私のほうに真正面に向き直られて、
「お熱の原因が、わかりましてございます。左肺に浸潤を起しています。でも、ご心配は要りません。お熱は、当分つづくでしょうけれども、おしずかにしていらっしゃったら、ご心配はございません」
とおっしゃっる。
そうかしら? と思いながらも、溺《おぼ》れる者の藁《わら》にすがる気持もあって、村の先生のその診断に、私は少しほっとしたところもあった。
お医者がお帰りになってから、
「よかったわね、お母さま。ほんの少しの浸潤なんて、たいていのひとにあるものよ。お気持を丈夫にお持ちになっていさえしたら、わけなくなおってしまいますわ。ことしの夏の季候不順がいけなかったのよ
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