佐渡
太宰治

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)佐渡夷《さどえびす》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)総|噸《トン》数、

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]
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 おけさ丸。総|噸《トン》数、四百八十八噸。旅客定員、一等、二十名。二等、七十七名。三等、三百二名。賃銀、一等、三円五十銭。二等、二円五十銭。三等、一円五十銭。粁程《キロてい》、六十三粁。新潟出帆、午後二時。佐渡夷《さどえびす》着、午後四時四十五分の予定。速力、十五|節《ノット》。何しに佐渡へなど行く気になったのだろう。十一月十七日。ほそい雨が降っている。私は紺絣《こんがすり》の着物、それに袴《はかま》をつけ、貼柾《はりまさ》の安下駄《やすげた》をはいて船尾の甲板《かんぱん》に立っていた。マントも着ていない。帽子も、かぶっていない。船は走っている。信濃《しなの》川を下っているのだ。するする滑り、泳いでいる。川の岸に並び立っている
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