つまらない本にだって、そんな事は、ちゃんと書かれてあるんだからね。なるべくなら僕は、清潔な、強い、明るい、なんてそんな形容詞を使いたくないんだ。自分のからだに傷をつけて、そこから噴き出た言葉だけで言いたい。下手《へた》くそでもいい、自分の血肉を削った言葉だけを、どもりながら言いたい。どうも、一般論は、てれくさい。演説は、これでやめる。」
熊本君は、さかんに拍手した。佐伯は、立ったまま、にやにや笑っている。私は普通の語調にかえって、
「佐伯君、僕に二十円くらいあるんだがね、これで制服と靴とを買い戻し給え。また、外形は、もとの生活に帰るのだ。葉山氏の家にも、辛抱して行き給え。わびしい時には、下宿で毛布をかぶって勉強するのだ。それが一ばん華やかな青春だ。何くそと固パンかじって勉強し給え。約束するね?」
「わかってるよ。」佐伯は、ひどく赤面しながらも、口だけは達者である。「そんな事を言ってると、君の顔は、まるで、昔のさむらいみたいに見えるね。明治時代だ。古くさいな。」
「士族のお生まれではないでしょうか。」熊本君は、また変な意見を、おずおず言い出した。
私は噴き出したいのを怺えて、
「熊本
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