振りに辟易《へきえき》したんだ。知識人のデリカシイなんだよ。」
「古い型のね。」佐伯は低く附け加えた。
「乾杯します。」と熊本君は、思いつめた果のような口調で言った。「僕は、ビイルを飲むと、くしゃみするんです。僕は、その事を科学的と言ったんです。」
「正確だ。」佐伯は、噴き出した。私も笑った。
 熊本君は笑わず、ビイルのコップを手にとって目の高さまで捧げ、それから片手で着物の襟《えり》をきちんと掻《か》き合わせて、
「佐伯君の出発を、お祝いいたします。あしたから、また学校へ出て来て下さい。」真剣な、ほろりとするような声であった。
「ありがとう。」佐伯も上品に軽くお辞儀をして、「熊本が、いつもこんなに優しく勇敢であるように祈っています。」
「佐伯君にも、熊本君にも欠点があります。僕にも、欠点があります。助け合って行きたいと思います。」私は、たいへん素直な気持で、そう言って泡立つビイルのコップを前方に差し出した。
 カチリと三つのコップが逢って、それから三人ぐっと一息に飲みほした。途端に、熊本君は、くしゃんと大きいくしゃみを発した。
「よし。よろこびのための酒は一杯だけにして止めよう。よろ
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