た電報である。
 翌朝八時、青森に着き、すぐに奥羽線に乗りかえ、川部という駅でまた五所川原《ごしょがわら》行の汽車に乗りかえて、もうその辺から列車の両側は林檎《りんご》畑。ことしは林檎も豊作のようである。
「まあ、綺麗《きれい》。」妻は睡眠不足の少し充血した眼を見張った。「いちど、林檎のみのっているところを、見たいと思っていました。」
 手を伸ばせば取れるほど真近かなところに林檎は赤く光っていた。
 十一時頃、五所川原駅に着いた。中畑さんの娘さんが迎えに来ていた。中畑さんのお家は、この五所川原町に在るのだ。私たちは、その中畑さんのお家で一休みさせてもらって、妻と園子は着換え、それから金木町の生家を訪れようという計画であった。金木町というのは、五所川原から更に津軽鉄道に依《よ》って四十分、北上したところに在るのである。
 私たちは中畑さんのお家で昼食をごちそうになりながら、母の容態《ようだい》をくわしく知らされた。ほとんど危篤《きとく》の状態らしい。
「よく来て下さいました。」中畑さんは、かえって私たちにお礼を言った。「いつ来るか、いつ来るかと気が気じゃなかった。とにかく、これで私も安心
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