古典風
太宰治
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)美濃《みの》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)芸|娼妓《しょうぎ》の七割は、
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「りっしんべん+發」、345−19]
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――こんな小説も、私は読みたい。(作者)
[#ここで字下げ終わり]
A
美濃《みの》十郎は、伯爵《はくしゃく》美濃英樹の嗣子《しし》である。二十八歳である。
一夜、美濃が酔いしれて帰宅したところ、家の中は、ざわめいている。さして気にもとめずに、廊下を歩いていって、母の居間のまえにさしかかった時、どなた、と中から声がした。母の声である。僕です、と明確に答えて、居間の障子《しょうじ》をあけた。部屋には、母がひとり離れて坐っていて、それと向い合って、召使いのものが五、六人、部屋の一隅にひしとかたまって、坐っていた。
「なんです。」と美濃は立ったままで尋ねた。
母は言いにくそう
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