虚構の春
太宰治
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)趣《おもむき》
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)作家の人物|月旦《げったん》やめよ、
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)太宰治ファン[#「ファン」に傍点]に
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)どうか/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\どうか
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師走上旬
月日。
「拝復。お言いつけの原稿用紙五百枚、御入手の趣《おもむき》、小生も安心いたしました。毎度の御引立、あり難く御礼申しあげます。しかも、このたびの御手簡には、小生ごときにまで誠実懇切の御忠告、あまり文壇通をふりまわさぬよう、との御言葉。何だか、どしんとたたきのめされた気持で、その日は自転車をのり廻しながら一日中考えさせられました。というのは、実を言えば貴下と吉田さんにはそういった苦言をいつの日か聞かされるのではないかと、かねて予感といった風のものがあって、この痛いところをざくり突かれた形だったからです。然《しか》し、そう言いなが
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