ゆる御精進おたのみ申し上候。昨日は又、創作、『ほっとした話』一篇、御恵送|被下《くだされ》厚く御礼申上候。来月号を飾らせていただきたく、お礼|如此《かくのごとくに》御座候。諷刺文芸編輯部、五郎、合掌。」
月日。
「お手紙さしあげます。べつに申しあげることもないのでペンもしぶりますが読んでいただければ、うれしいと思います。自分勝手なことで大へんはずかしく思いますがおゆるしください。御記憶がうすくなって居られると考えますが、二月頃、新宿のモナミで同人雑誌『青い鞭《むち》』のことでおめにかかり、そしてその時のわかれ方が非常に本意なく思われて、いつもすまなく感じていて、自分ひとりでわるびれた気持になっています。いつかお詫《わ》びの手紙を出そうと念じながらも、ひとりぎめの間のわるさの為《ため》に、出しそびれて、何かのきっかけをと思い、あなたの『晩年』とかいうのが出たら、そのときのことにしようと最近心にきめていましたところ、今日、本屋であなたの一文を拝見して、無しょうにかなしくなり、話しかけたくなりました。それでも、心のどこかで、びくびくしていて、こまります。あの夜、僕はとりみだし荒《すさ》ん
前へ
次へ
全117ページ中64ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
太宰 治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング