た》り、中止。一昨夜、突然、永野喜美代参り、君から絶交状送られたとか、その夜は遂《つい》に徹夜、ぼくも大変心配していた処、只今、永野よりの葉書にて、ほどなく和解できた由うけたまわり、大いに安堵《あんど》いたしました。永野の葉書には、『太宰治氏を十年の友と安んじ居ること、真情|吐露《とろ》してお伝え下され度《た》く』とあるから、原因が何であったかは知らぬが、益々交友の契《ちぎり》を固くせられるよう、ぼくからも祈ります。永野喜美代ほどの異質、近頃沙漠の花ほどにもめずらしく、何卒、良き交友、続けられること、おねがい申します。さて、その後のからだの調子お知らせ下さい。ぼく余りお邪魔しに行かぬよう心掛け、手紙だけでも時々書こうと思い、筆を執《と》ると、えい面倒、行ってしまえ、ということになる。手紙というもの、実にまどろこしく、ぼくには不得手《ふえて》。屡々《しばしば》、自分で何をかいたのか呆《あき》れる有様。近頃の句一つ。自嘲《じちょう》。歯こぼれし口の寂《さぶ》さや三ッ日月。やっぱり四五日中にそちらに行ってみたく思うが如何《いかが》? 不一。黒田重治。太宰治様。」

 月日。
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