だ。では元気で、僕のことを宣伝して呉れと筆をとること右の如し。林彪太郎。太宰治様|机下《きか》。」
「メクラソウシニテヲアワセル。」(電報)
「めくら草紙を読みました。あの雑誌のうち、あの八頁だけを読みました。あなたは病気骨の髄を犯しても不倒である必要があります。これは僕の最大限の君への心の言葉。きょう僕は疲れて大へん疲れて字も書きづらいのですが、急に君へ手紙を出す必要をその中で感じましたので一筆。お正月は大和国《やまとのくに》桜井へかえる。永野喜美代。」
「君は、君の読者にかこまれても、赤面してはいけない。頬被《ほおかぶ》りもよせ。この世の中に生きて行くためには。ところで、めくら草紙だが、晦渋《かいじゅう》ではあるけれども、一つの頂点、傑作の相貌を具えていた。君は、以後、讃辞を素直に受けとる修行をしなければいけない。吉田生。」
「はじめて、手紙を差上げる無礼、何卒《なにとぞ》お許し下さい。お蔭様で、私たちの雑誌、『春服』も第八号をまた出せるようになりました。最近、同人に少しも手紙を書かないので連中の気持は判りませんが、ぼくの云いたいのは、もうお手許迄《てもとまで》とどいているに違いな
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