すが、お金が必要なんじゃないですか? 二百八十円を限度として、東京朝日新聞よろず案内欄へ、ジュムゲジュムゲジュムゲのポンタン百円、(もしくは二百円でも、御入用なだけ)食いたい。呑《の》みたい。イモクテネ。と小さい広告おだしになれば、その日のうちにお金、お送り申します。五年まえ、おたがいに帝大の学生でした。あなたは藤棚の下のベンチに横《よこた》わり、いい顔をして、昼寝していました。私の名は、カメよカメよ、と申します。」

 月日。
「きょうは妙に心もとない手紙拝見。熱の出る心配があるのにビイルをのんだというのは君の手落ちではないかと考えます。君に酒をのむことを教えたのは僕ではないかと思いますが、万一にも君が酒で失敗したなら僕の責任のような気がして僕は甚だ心苦しいだろう。すっかり健康になるまで酒は止《よ》したまえ。もっとも酒について僕は人に何も言う資格はない。君の自重をうながすだけのことである。送金を減らされたそうだが、減らされただけ生活をきりつめたらどんなものだろう。生活くらい伸びちぢみ自在になるものはない。至極簡単である。原稿もそろそろ売れて来るようになったので、書きなぐらないように書
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