しぶっていたのですが、今月は自分でも馬鹿なことを仕出かして大変、困っているのです。従って到底御用立出来ませんから、悪しからず御了承下さい。これは全く事実の問題です。気持ちの上のかけ引なぞ全くございませぬ。あなたに対する誠意の変らぬことを、若《も》し出来れば信じて下さい。窓の下、歳の市の売り出しにて、笑いさざめきが、ここまで聞えてまいります。おからだ御大事にねがいます。太宰治様。細野鉄次郎。」
「罰です。女ひとりを殺してまで作家になりたかったの? もがきあがいて、作家たる栄光得て、ざまを見ろ、麻薬《まやく》中毒者という一匹の虫。よもやこうなるとは思わなかったろうね。地獄の女性より。」
月日。
「謹啓。太宰様。おそらく、これは、女性から貴方に差しあげる最初の手紙と存じます。貴方は、女だから、男は、あなたにやさしくしてやり、けれども、女はあなたを嫉妬して居ります。先日お友達のところで、(私は神楽坂《かぐらざか》の寄席《よせ》で、火鉢とお蒲団《ふとん》を売ってはたらいて居ります。)あなたのお手紙を読んで、たいへん不愉快の思いをいたしました。そのお友達は、ふたいとこというのでしょうか、大叔父と
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